高校英文法:最難関文法事項の1つとは
今回はまったく万民向けの話ではありません。
英語で高みを目指す気持ちが強い人向けです。
テーマは、描出話法(びょうしゅつわほう)です。
描出話法は、
直接話法でもなければ間接話法でもない、
しかしどちらとも微妙に共通点はある、
というわかりにくい話法です。
聞いたことない、という人もふつうに多い
のではないでしょうか。
そして間違いなく、英文法で登場する
最難関事項のひとつであると言えます。
しかし、最近だんだんと入試問題に小説文が
使われることも多くなってきており、小説文中に
実は何気なく使われていることが多いのです。
ただ、知らないから気づかないだけです。
実際、東大でも下線部訳の問題で描出話法が出たことがあります。
英語を得意科目にし、主な得点源にしている人は
おさえておいたほうがいいと思います。
では以下で、その特徴を簡単な例で見てみましょう。
Coming back from a trip, he found a note from his wife.
She would be back at four, but the children were in the garden.
He tossed down his hat, and still in his dark business suit
went to the garden.
太字の部分が描出話法です。これを直接話法で書いたなら、
The note said, “I will be back at four,
but the children are in the garden.”
となるところであり、間接話法であれば、
The note said that she would be back at four,
but that the children were in the garden.
となります。
太字部分を直訳ではなく、描出話法であることをふまえて
正しく訳すと、
「私は4時に帰りますが、子供たちは庭にいます」となります。
描出話法は、直接話法で使われるはずの会話・引用を表す
かぎかっこが使われません。むしろ間接話法っぽいです。
しかし間接話法とは違い、「主語+伝達動詞」という間接話法の文頭で
必ず使われるはずの表現が使われません。つまり、「The note said...」
という部分は書きません。
間接話法なら必ず用いるはずの
伝達動詞(say, ask, tellなど)を省略してしまうのです。
ここが描出話法だ、と気づくのは難しいでしょう。
ふつう、そんなものが使われているとは思わず、
たいていなんとなく読み進めてしまうものです。
その部分を正しく読まないと解けない問が必ずしも出るわけでもないので、
それで問題がないことは多いでしょう。
しかしよく考えれば、いきなりShe would beと書いてあって、
「なんだこのwouldは?筆者が登場人物の行動について推量をしているのか?」と
少し疑問に思うことでしょう。うまく話の筋がつながらないのに気づくでしょう。
そのとき描出話法の知識があるなら、
「あ、これは実はメモ書きに書いてあったメッセージの中身なのだな!」と
考えて、話の筋をよりよく理解できるでしょう。
潮田耕一
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